2025年 7月例会
2025.07.01


「ナガサキ」という平和ブランド
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の活動を軸に、「ナガサキ」という地名が世界における“平和ブランド”として果たすべき役割について語られた。RECNAは2012年に設立された共同教育研究施設で、被爆地である長崎の地に根ざし、被爆の実相とその記憶を次世代につなぐ活動を行っている。
講演では、2025年のノーベル平和賞を長崎の被爆者が受賞したことや、ローマ教皇が長崎を先に訪問した事実などが紹介され、「長崎を最後の被爆地に」という強いメッセージが国際的に広まりつつあることが語られた。さらに長崎は、歴史・文化・自然・世界遺産といった多彩な資源を持ち、アジアとの距離の近さという地理的利点もあることから、広島とは異なる形での「平和の発信地」としての独自性を持つとされた。
また、平和と経済活動は従来、結びつけにくいとされてきたが、軍備管理や核実験モニタリングといった分野では、技術革新がその壁を崩しつつある。特に、日本の製造業や通信・宇宙関連のスタートアップには、検証制度の信頼性を支える技術で貢献の余地が広がっている。たとえば、衛星通信装置や小型ドローン、AI監視技術の提供、あるいはリモートセンシングによる合意遵守の可視化などが挙げられる。長崎の産業的蓄積と平和ブランドを活かせば、「平和のためのビジネス」という新たな市場形成も現実味を帯びてくる。
被爆者のいない時代の到来は目前に迫っており、平和の語り部に依存しない新たな発信の仕組みが求められている。その中で「地球市民」という概念が提唱された。これは国家や地域の枠を超え、地球規模の課題を自分ごととしてとらえ、責任ある行動を取る人材を意味する。講演では、その育成を目的とした「地球市民育成塾」の構想も紹介された。
「一人ひとりが声を上げ、世界を変える時が来ている」と述べ、「平和ブランド・ナガサキ」の理念を自らの行動に結びつけていくことが重要であると訴えた。