2025年12月例会
2025.11.02
長崎の中小企業は人口減少や若手流出の影響で慢性的な人手不足に直面し、育成が追いつかず新しい挑戦にリソースを割けない構造的課題を抱えている。従来の「フルタイム社員前提」の人材戦略では限界があり、外部人材を活用した人的資本経営とエンゲージメント向上が重要性を増している。人的資本経営とは人材をコストではなく投資対象と捉え、スキル・経験・意欲を最大化して企業価値を高める考え方であり、情報開示要請や若手世代の価値観変化(柔軟性・成長・意義)を背景に注目されている。本講演では制度対応よりもエンゲージメント向上の視点に焦点を当てる。
エンゲージメントは「組織の目的達成に自主的に貢献したい心理・行動状態」と定義され、その向上には実体験を通じた変化が不可欠である。特に副業・兼業などの越境人材との共創プロジェクトが効果的で、協働を通じて自己認識の変化、視座の拡張、新たなネットワーク形成が促され、成長実感・自律性・意義・コミュニティといった要素が高まる。越境人材活用にはコーディネーターによる精緻なマッチングが必要で、業務内容や社風、目的、メリットとコストの認識を含めた設計が求められる。また外部専門家を活用する際には専門性よりも課題設定が先行し、WDLでは課題整理段階から経営者に伴走する点が特徴である。
実践手段として副業マッチングや越境留学があり、都市部人材とのプロジェクト型協働を通じて社内に「第二のチーム」が形成される。その結果、自己裁量の拡大、学びの実践、外部視点による事業改善、自社や地域への誇りが醸成される。導入ステップは①テーマ設計②チーム設計③期間設定(まず3か月程度)であり、情報漏洩や不公平感などのリスクは契約や説明で管理可能とされる。事例として鹿児島のO社は副業人材7名を受け入れ、大企業レベルの知見導入、売上拡大、コスト削減、従業員意識向上などの成果を得た。重要なのは「万能人材」に依存するのではなく「一緒に何をするか」を設計し、小規模から始めることである。
結論として、越境人材の受入は単なる人材不足解消策にとどまらず、社員の成長機会とエンゲージメント向上を同時に実現する経営施策となり得る。第一歩は「どのテーマで外部と共創するか」を経営として議論し、挑戦意欲のある社員を把握することである。